Pictorial Sources on the American Civil War
図像で見る アメリカ南北戦争
アメリカの歴史を決定づけたと言って過言ではない南北戦争はアメリカ社会にどのように記憶されたのか。
20世紀転換期に続々と刊行された図版報道資料を復刻。
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Part 1:
Battles and Leaders of the Civil War: People’s Pictorial Edition (1894)
ISBN 978-4-86340-321-5 • A4横判 • 324 pp., ill.
定価 本体38,000円+税 ▶
2021年
南北戦争を遂行した人々の手記によって戦争の全容が示された本のなかで定番とされるのがBattles and Leaders of the Civil Warである。存命の北軍、南軍双方の主要な司令官の大半が寄稿したもので、Century社から1887年から88年にかけて刊行、全4巻で約3200ページ、著者総勢226人で400稿近くからなる刊行物であった。 もともとは“Century War Series”として知られるようになる、1884年11月から3年続いたCentury Magazineの連載で、二人の編集者が担当していた。連載開始初年度は雑誌の発行部数も倍近くに伸びるなどこの企画は好評で、内容を追加して書籍化された全4巻セットの販売部数も1890年代半ばには7万5千部に及び、今なお歴史資料としての重要性を保っている。この4巻本をもとにしてさらに、図版を増補しつつより一般読者向けに簡約に再編集したものが1894年3月26日から同年8月6日にかけて分冊刊行された。それを全1巻に製本したのが “People’s Pictorial Edition”。
3種類のいずれの版においてもその都度注意深く編集が行われ、図版類の選定も熟慮されて、地図、写真のほか、戦場に赴いた画家の描いた当時の戦争画はもとより、新たな技術で制作されなおした精細な画質のものも加えられるなど多様な図版が含まれている。
Part 2:
Louis Shepheard Moat, ed.
Frank Leslie’s Illustrated Famous Leaders and Battle Scenes of the Civil War
(1896)
ISBN 978-4-86340-322-2 • A3判 • 544 pp., ill.
定価 本体68,000円+税 ▶
2021年
ニューヨークにあるLeslie社は1890年代に、南北戦争の期間中にFrank Leslie’s Illustrated Newspaper (FL)に掲載されたものをもとに何度も再編集してそれぞれ別の書籍として刊行していた。本書はこれらの中で最も分量の多いものである。900点近くの大判版画は南北戦争の推移や各地での戦闘、両陣営の将校や政治家についてなど、様々な事柄を今もありありと伝える。
FLは多くの図版を用いた誌面が特徴で、競合誌より多くの特別な画家を雇い入れており、Arthur Lumley、Henri Lovie、Edwin Forbes、William Waud、James E. Taylor、Frank H. Schell、Fred. B. Schell、そして後にFLの図像部門を率いることになる Joseph Beckerなどが所属、他社より数多くの絵を制作していた。戦争終結の数か月前には、80名を超える画家の3000点以上の絵を出してきた、というコメントを出して自負を示した。ただ上記のような“specials”と称えられた画家の作品は実際にはこの半分以下と見られている。
Part 3:
Ben La Bree, ed.
The Confederate Soldier in the Civil War, 1861–1865 (1895; 1897 ed.)
ISBN 978-4-86340-323-9 • A3判 • 482 pp. (incl. 2 col.), ill.
定価 本体68,000円+税 ▶
2021年
南北戦争に関する初期の著作で評価の高いものはほとんどが勝利した北の視点で書かれているので、南からの視点を反映したあまり知られていないものを加えることとした。戦時中の南部では、北部のような上質な絵入り雑誌は物資の不足もあって刊行されていなかった。紙やインクはもともと北の工場から供給されていたし、ヨーロッパからの輸入も海上封鎖によって断たれていた。それに版画制作の熟練者が少なかったこともある。
本書は連合国側の資料を様々寄せ集めた内容で、南軍司令官たちが記した、「一連の軍事活動、各地での戦い、攻囲戦、突撃戦、小規模な衝突、など」についての記録を時間軸に沿って構成したものが主になっている。加えて「連合国の創設と構成の全史」、連合国陸軍と海軍の組織と活動についての記述、南軍戦没者を顕彰するモニュメントや連合国で用いられた紙幣の写真、「連合国の詩」なども収録され、文章と図版の両方についての索引も付されている。
本書はConfederate War Journal編集者のBenjamin La Breeによる編集で1895年にケンタッキー州ルイビルのCourier-Journal Job Printing Companyから出された。1897年に同社から、設立者George PrenticeにちなんだPrentice Pressの名義で内容の変更なく再版された。
Part 4:
Rossiter Johnson
Campfire and Battlefield
(1894; 1896 ed.)
ISBN 978-4-86340-324-6 • A4判 • 554 pp., ill.
定価 本体47,000円+税 ▶
2022年
著者Rossiter Johnsonは19世紀後半の定評ある参考図書を多く編纂した経験豊かなライター、編集者である。戦争当時の司令官たちによる記述が数多く掲載され、用いられたおよそ一千点の図版はそのほとんどがブレイディ・コレクションの写真で、さらに地図、版画、線画、有名な戦闘の場面の絵画の複製も含まれる。図版編集はGeorge Spielと戦争中に戦争画特派員であったFrank Field。
また、戦争歌、徴兵反乱、南部の戦争を題材にしたユーモア、遠征生活、諜報活動や偵察、捕虜収容所と脱走、襲撃、女性の貢献などのトピックを提供し、さらに文と図版の両方に対する詳細な索引などがあって、本書の特徴となっている。初版は1894年、本復刻は予約出版された1896年版を底本とした。
Part 5:
Benson J. Lossing
A History of the Civil War, 1861–1865 (1912)
ISBN 978-4-86340-325-3 • A4判 • 544 pp. (incl. 16 col. pl.), ill.
定価 本体47,000円+税 ▶
2022年
Benson John Lossingはアメリカの歴史を一般向けに多く書いた人物。立志伝中の人で、若いころは新聞に記事を寄せ、版画制作も学んでいた。大衆紙で培った版画と文章を組み合わせる能力は将来の成功のカギとなる。アメリカ中を広く歩き回って実際の状況を確かめ、生存者の証言を集めて書いたアメリカ独立戦争の本Pictorial Field-Book of the Revolution (1850–52)で名声を得た。わかりやすい言い回しで、絵と現地調査を組み合わせたこのやり方を自ら“topographical history”と呼び、場所と歴史的事件を結び付けて解説し、この新しい国の歴史への愛着を染み渡らせようとした。
南北戦争についても同様の手法で、戦争終結間近の、また終戦直後の戦いの余波が残る様々な場面や戦場を見て回ってまとめ上げ、1866年から68年にかけて3巻で刊行した。以前に出版されたものを含め自身のスケッチを元にした小型の図版が使われている。軍内部の資料類の利用や、従軍者や一般市民への聞き取りを北側に限らず南側からも行うなど、かなり際どい作業も許可されていたことは特筆すべき点である。また彼は典型的な強い北部支持者であった。
本復刻の底本としたのは、1912年に“Great National Struggle”の50周年を記念してWar Memorial Associationから出版された大衆向けの縮約記念版。ブレイディ・コレクションから選ばれた1千点以上の写真と、Henry A. Ogden ほか歴史や軍事関係を専門とする画家の彩色加工された絵画などが加えられて16分冊で刊行された。